五鉄の軍鶏鍋

2017–04–12 (Wed) 11:00
鬼平犯科帳_中村吉右衛門

2016年12月(2日/3日)に放送された前後編スペシャル…150作目をもって中村吉右衛門版『鬼平犯科帳』が27年に渡る幕を閉じた。
原作は、言わずと知れた、1967年~1989年にかけて文藝春秋出版の「オール讀物」に連載されていた池波正太郎の人気同名小説『鬼平犯科帳』であり…
テレビドラマ化は勿論のこと…映画、舞台、漫画(コミック)…そして最近、アニメ化もされている。
テレビドラマ化においては…
原作者の池波が“鬼平”のイメージとしたとも言われる…中村吉右衛門の実父…(八代目)松本幸四郎(1969年10月7日~1970年12月29日/1971年10月7日~1972年3月30日)版を皮切りに…
丹波哲郎(1975年4月2日~9月24日)版、萬屋錦之介(1980年4月1日~9月30日/1981年4月14日~10月13日/1982年4月20日10月12日)版と…
錚々たる面々が“鬼平”を演じてきていた。
そして、四代目の“鬼平”となる吉右衛門版が1989年7月12日にスタートし…
全9シリーズ+スペシャル12作+映画1作をもって昨年末までに至ったわけである。
当初は、ともすると、それまでの大御所的なスター俳優に比べると、さほど目立った活躍の場があったわけでもなかった吉右衛門さんではあったが…
勿論、歴代の“鬼平”も見たうえで…個人的には、吉右衛門版の“鬼平”が一番、池波の小説のそれを体現しているように思う。
演技のなかでみせるちょっとした所作…煙管の扱い方、お猪口の持ち方、線香の消し方、等々…
とにかく吉右衛門さんには他にはない“粋”があった。
その“粋”さをみせる場面が多かったのが、五鉄という軍鶏鍋屋の二階の座敷である。
そこで度々、食されたのが…軍鶏鍋屋だけに、まさに軍鶏鍋である。
今回は、『鬼平犯科帳』のドラマに関してではなく…こちらについて少々書かせて頂こうと思う。

鬼平犯科帳_五鉄

「玉ひで」というと、“行列のできる(元祖)親子丼”の店といった観が強いようだが…
1760年(宝暦10年)創業の軍鶏鍋屋で…
しかも、その創業時期は…
実在の長谷川平蔵(宣以)が…まさに火付盗賊改方の長官として活躍していた時期(1787年(天明7年)~1795年(寛政7年))とも同時期…
現代ならば、メトロにでも乗れば…清水御門外の役宅から人形町ならば、ほんの10数分という距離なのだが…当時は、はたしてそれほどの近距離感があったかどうかはわからない。
もしも実在の平蔵が、小説やドラマばりの粋人・食通であったならば…舌鼓をうちにわざわざ足を延ばしていたかもしれないが…

玉ひで_軍鶏鍋

池波正太郎の『鬼平犯科帳』に描かれている軍鶏鍋屋「五鉄」は…
“竪川にかかる二ツ目橋(現:二之橋)の北詰”あたり、とのことで…
わかりやすく言えば、大相撲の行われる両国国技館から程近くというところという設定である。
因みに、この界隈には…
「五鉄」のモデルとされたと言われている「かど家」に「ぼうず志ゃも」という軍鶏鍋屋があるが…
「かど家」は若干新しく?…1862年(文久2年)…幕末の動乱期…新選組が今まさに生まれようとしていた時期…
一方、「ぼうず志ゃも」は、かなり古く…犬公方と揶揄される綱吉が将軍職に就いた時期…
この綱吉治世の初期…天和年間(1681~1684年)創業とされており…
余談だが…綱吉がこの時期に行なった“天和の治”などは善政として高い評価を得ており…
実は、徳川封建体制をある意味確立したのは綱吉と言っても過言ではないくらいの“名将軍”だとも言える。
如何せん、悪名高い“生類憐れみの令”により、一気に“迷将軍”のレッテルが貼られている。
今回は“食”の話題ということで…
この“生類憐れみの令”以前は、実は我が国でも…韓国や中国のように…“犬料理”はごく普通に食されていたようで…
それ以後は、現在に至るまで犬料理を食する習慣が我が国からはなくなったということである。

“軍鶏鍋”の話題から、だいぶ話がそれたが…
小説では、「五鉄」の“軍鶏鍋”は…
酒、醤油、みりん、水を合わせた濃い目の割り下に、笹掻き牛蒡と軍鶏の“もつ”を鉄鍋で煮込んだもの…ということになっている。

「かど家」は八丁味噌…「ぼうず志ゃも」も秘伝の割り下に味噌を合わせるので…
「五鉄」の醤油味とは多少違う味わいかもしれないが…
「ぼうず志ゃも」では以前に頂いたことがあるのだが…これがまた、なかなかにいけるのです!
いわゆる江戸風というのであれば…
池之端の「鳥栄」で頂いたことがあるが…こちらもまた美味!
ここは外観もなかなか風情があってよかった。
その「鳥栄」から程近いところにある“牛鍋(すき焼)”の「江知勝」…
実はあまり一般的な“すき焼”が好みではない当方でも、ここの“牛鍋”はお薦めである!!
「玉ひで」では、本来の鍋は頂いたことがなく…1Fで親子丼しか頂いたことがないので…
機会があれば“鬼平が愛した軍鶏すき焼き”も…是非、食してみたいものである!!

2013年、池波正太郎の生誕90周年にあたり東北自動車道 羽生パーキングエリア(上り)にオープンした“鬼平江戸処”にも、「玉ひで」プロデュースの…その名もまさに『五鉄』という企画店があるのだが…
“鬼平江戸処”には、以前にバスツアーの帰りに立ち寄ったものの…
トイレ休憩ほどの短い滞在のため、ちょっとしたお土産を物色するのがやっとで…
ゆっくり食事とまではいかず…
そもそも、高速のパーキングということは、車で行かねばならず…
鍋をつつくのに御酒なしというところもネックとなって…
その後、足が向かないままになってしまっている。

五鉄_しゃも鍋定食
五鉄しゃも鍋定食 / 1,500円
鬼平犯科帳の小説に出てくる「五鉄の軍鶏鍋」をイメージし、「国産軍鶏肉のブツ切りと、牛蒡、しらたき、焼豆腐、ネギ、五鉄特製の割下、玉子」を使った鍋を定食スタイル(ご飯、お新香付)で再現しているとのこと。

<<追記>>
中村吉右衛門版『鬼平犯科帳』といえば、エンディングに流れる『インスピレイション』…
ジプシー・キングスの奏でるフラメンコ・ギターの音色が、本編“愁話”の余韻に一層浸らせてくれる一助となった。
一見、ミスマッチのように思える…ルンバ・フラメンカと和の情景が織り成すそのエンディングロールは、シリーズを通し一貫して替えられることはなかった。



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鬼平と黒騎士

2008–07–02 (Wed) 22:21
鬼平&黒騎士_酒_sample

元禄年間(1688~1704)創業という歴史ある沓掛酒造(長野県上田市)の酒銘【福無量】をご存知の方も多いことと思うが…
そのラインナップに【鬼平犯科帳】という銘柄のものがあると知り…早速、取り寄せてみた!
鬼平犯科帳』といえば、言わずと知れた池波正太郎原作の時代小説であり…
くどいようだが、“長谷川平蔵…人呼んで鬼の平蔵!”を我らが御頭…中村吉右衛門様が演じている国民的ドラマでもある。
酒に話を戻すと…
この【福無量】という酒銘は『法華経』全二十八品の中の『観世音菩薩普門品第二十五』…
通称、“観音経”といわれる御経の一節にある「福寿海無量」という文言からの引用で…
“福が限りなきように”という願いを込めた有難い御酒なのである。
勿論、銘に劣らず味の方も…
長野県産酒造好適米「美山錦」や兵庫県産「山田錦」を原料とした高品質な酒造りをし、多くの品評会でも高位受賞をする程の酒銘なのです。
出来れば“五鉄”の軍鶏鍋でもつつきながら頂きたいものです!

続いてご紹介するのは…
つくし】で有名な明治26年(1893)創業の西吉田酒造の【黒騎士】である。
この蔵元は福岡の米どころ…筑後平野の南部にあり、県内では数少ない本格焼酎を造っている。
黒麹(麦麹)」を使用し、減圧蒸留法と常圧蒸留法を使い分け、さらに瓶で5年以上長期保存した古酒をブレンドすることにより深みのある焼酎に仕上ている。
この【黒騎士】は“麦チョコ風味”と称されるように…
ほのかな甘みと香ばしさ、クセの感じは…
一瞬、焼芋焼酎を思わせるような…
クセのある“芋”が好きな私の嗜好にピッタリのものであった!
米国でも焼酎の人気が高まりつつあるということで…
また“サムライ”ブームとも相まって…
ティアラ】、【勇者】、【くノ一】そしてこの【黒騎士】などを“サムライ・シリーズ”として取り扱う店が増えているという。
まぁ、私的には「黒騎士」ときて…
上記「鬼平」つながりでも“サムライ”とはイメージし難く…
やはり小林源文著作の『黒騎士物語』が連想される!
1982年3月号~1983年8月号の月刊ホビージャパン誌上にて掲載された東部戦線におけるドイツ国防軍陸軍戦車連隊第8中隊…通称“黒騎士”中隊を率いる中隊長エルンスト・フォン・バウアー中尉(のち大尉)の活躍などを描いた架空戦記である。
架空の物語ではあるが、その背景などの考証・考察はさすが小林源文氏であり…
軍事フリーク諸氏にも読み応えのあるものとなっている。
出来れば、『黒騎士物語』にはドイツの小麦を原料にした蒸留酒コルン(Korn)の【オルデスローエ(OLDESLOER)】あたりが合うのかもしれないが…
黒騎士物語』を読みながら【黒騎士】を頂く…これもまた乙なのではないだろうか…
黒騎士_コミック

ダビデの星の泡々酒

2008–07–02 (Wed) 21:07
最近、“発泡”“微発泡”なる日本酒をよく目にする。
ただ、このての発泡酒は若干甘口の傾向があり…
辛口好みの私には少々物足りないところもある。
発泡性の日本酒は瓶詰め後発酵によって炭酸分を閉じ込めたまま加熱殺菌することで発酵をとめているようで…
その結果、麹カビの糖化が優位に働き甘口の傾向になるものとは思いますが…
ただ、女性などには逆にこのテーストが好評なようです。
シャンパンではその甘辛度を甘さを調整するために添加される様々な量のシロップの残糖分量により…
doux(ドゥー)」
demi-sec(ドゥミ・セゥク)」
sec(セック)」
extra-sec(エクストラ・セック)」
brut(ブリュット)」
(※作り手の中には糖分を添加しない「extra brut(エクストラ・ブリュット)」という“超辛口”を造っているところもあるようだ)
…の5段階にわけているが…
日本酒の場合…
麹カビの糖化と酵母の発酵の兼ね合いにその甘辛度が左右されるとあって…
つまり…
麹カビを活発にすると同時に酵母の発酵を抑え気味にするような環境を作ってやれば最終的に糖が余り酒は甘口に…
逆に麹カビの糖化を抑え気味にし、酵母の発酵を活発にするような環境にしてやれば糖がほとんど残らず辛口の酒になるというわけである。
文字にすればなんだか簡単なようにも思えるが…
そこは生き物と環境に多大に影響されるわけで、ことはそう簡単なことでもないようなのである。

まぁ、あれこれ考えるより…
日本酒にせよシャンパンにせよ…
とどのつまりは、その恵みに感謝し…美味しく頂ければそれでいいのであるが…(^ ^;


ところで…
先日、丸本酒造(岡山)の【発泡純米酒“泡々酒”】というのを頂いてみた…
中味は同酒造より発売されている通常の【泡々酒】と同じなのだが…
↓はシャンパンボトルに詰められた【泡々酒(HOU HOU SHU)スペシャルボトル】で…
1000本“限定”&ボトル、ラベルデザインに惹かれ購入してみたというわけである。

泡々酒_sample_02

どういう由来なのか?↑のボトルを見て頂ければおわかりのことと思うが…
ヘキサグラム(六芒星)…つまりは、“ダビデの星”がラベルマークとして描かれている…
我が国の家紋のなかにも“篭目紋”という同様のデザインがあるが…
星中のデザインは、どうみても我が国の建築物というよりはイスラムかどこかのお城?モスク?とも思える…
新興宗教の…という可能性もあるが…(苦笑)
シンボルの意味や如何に??

因みに、“ダビデの星”ではなく“篭目紋”をブランドシンボルにしている企業として有名なのは…
その名が表す通り…“篭目(KAGOME)”である…
1917年(大正6年)に↓の紋を商標登録したとのことである。
篭目

美穂の酒

2008–07–02 (Wed) 04:22
日本酒ブームの切っ掛けともなった『夏子の酒』(尾瀬あきら原作)という…TVドラマ化もされたコミックがあったが…
広島に全国でも極少数の女性の杜氏が醸する“今田酒造”という蔵元がある。
杜氏制を廃止し、蔵の跡取りであった今田美穂さんが杜氏(製造部長)を務め、京大卒業後、今田酒造に入社したという異色の蔵人…杉浦弘真さんを中心に、たった5人で酒造りを行っている…
造りの規模、年間500石(一升瓶換算5万本)という小規模な蔵元である。

この蔵元の酒といえば…
日本酒好きの諸氏ならご存知のことと思うが…
富久長】という酒銘がある。

そのラインナップに【美穂】と書いて“びほ”と読む酒がある。
勿論、杜氏である今田美穂さんの名前から命名されたことは言うまでもない。

以前、購入してみたのが【純米吟醸 美穂 瓶火入れ】…
その程よい辛さと酒味の旨さに惚れ…
純米吟醸 ひやおろし 美穂】も購入してみたわけである。

Biho_Biho_RR.jpg
【純米吟醸 美穂 瓶火入れ】(左)と【純米吟醸 ひやおろし 美穂 】(右)

私事ではあるが…
この酒を購入する切っ掛けのひとつは…
私にとって唯一(?)頭の上がらぬMと同名だから…ということは言うまでもない…(苦笑)

【富久長】は広島県の瀬戸内海に面した安芸津町にある。
広島県といえば…多々あるものとは思うが…牡蠣の産地として知られている。
余談であるが…私の曽祖父は父が幼少の頃(昭和初期)に「牡蠣が食いたい」ということだけで広島まで食べに出かけるような人だったそうである。
まぁ、それはさておき…
広島のなかでも安芸では【ひろしまサラブレド牡蠣 安芸の一粒】という高級ブランド牡蠣を産出しているほどである。

サッとレモンを絞った生牡蠣を頂く時…よく“白ワインがあう”…と言われるが…
それは白ワインが口の中の臭味もとってくれるからであるが…
それならば“純米吟醸酒”の方がよりよいのだとか…

ならば、同地の水(勿論、海水・淡水の違いはあれど)で育った【安芸の一粒】を【純米吟醸 美穂】で頂く…
さぞや美味なることであろう…
さすがにこの時期は真牡蠣は無理であろうが…
まぁ、同じ広島は江田島産の【ひとつぶくん】なら産卵をしないため夏のこの時期にも身痩せすることなく一年を通して食することも出来るらしいので…
ひとつぶくん】でも喰らいながら一杯…
いや、“いっぱい”やりたいものである…(///// ̄‥ ̄/////)

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